2026.8.20 UPDATE!!
「
セサミストリート
」に登場するキャラクターは、100種類以上。「すべての子どもたちが、番組の中に自分を見つけられるように」――そんな願いから、その1体ずつに性格や家庭環境、“学びのテーマ”が丁寧に設定されている。
そんなキャラクターたちを生み出してきたセサミワークショップのクリエイティブディレクター、ルイス・ヘンリー・ミッチェルさんが、アメリカから来日し、2026年8月6日に都内にて1日限りの体験型ワークショップ(対象は小学生以上)を実施。“自分の「大事」を守るオリジナルキャラクター作りに挑戦する”という内容で講師を務めた。このワークショップの感想や、キャラクター制作における想いをルイスさんに聞いた。
ワークショップで作ったのは、みんなの“大事”を守る、世界にひとつのキャラクター
体験型ワークショップは、東京都人権プラザ(東京・港区)にて、現在開催中の特別展示「セサミストリートの仲間たちと学ぼう!子どもの権利」に連動した企画として、無料で開かれた。
その講師を務めたのが、「セサミストリート」を制作する非営利団体セサミワークショップのクリエイティブディレクター、ルイス・ヘンリー・ミッチェルさん。1992年から制作現場に参加し、キャラクターアート全般を指揮してきた人物だ。セサミストリート初の自閉症のキャラクター「ジュリア」のデザインを手掛け、南アフリカのHIV陽性のキャラクター「カミ」の制作にも携わっている。
ワークショップでは、参加した子どもたちが、上述の特別展示を見て“自分にはどんな「権利」があるのか”を学んだあと、ルイスさんからコツを教わりながら、自分の“大事”を守ってくれるヒーローを制作。子どもたちは「玩具で遊ぶ権利」、「おしゃれする権利」、「自分で選ぶ権利」、「反対する権利」などを挙げ、それをイメージして“自分のヒーロー”を作っていった。
セサミストリートに長年携わるレジェンドに直撃インタビュー!
今回は、上述のワークショップを終えたルイスさんに、同イベントの感想をはじめ、セサミストリートという作品について、また、キャラクター制作における想いやこだわりについて詳しくインタビュー!
――子どもたちが“自分のヒーロー”を作った先ほどのワークショップはいかがでしたか?ほかの国でもこうした活動はされていたんですか?
【ルイスさん】ほかの国やクルーズ旅行のアクティビティなどでも、一般の方々と交流するこのような場を持ったことがあります。そのときは保護者の方々からハグしていただいたり、泣く方もいらっしゃったり、とても喜んでいただいてうれしかったですね。過去には2名ほど、失神した方もいらっしゃったんですよ。また、ベルギーでは事前に顔出しのプロモーションをしていたせいか、どこに行っても気づいていただいて、まるでビートルズの一員になったかのような気分になったこともあります。
そして、先ほどの日本でのワークショップでは、すごくインテリジェントなお子さまが多いなという印象を持ちました。子どもらしさの中にも、大人っぽさが混在しているような…。“自分にはどんな「権利」があるのか”という、現代の問題がテーマになっていましたが、それをしっかり認識しているお子さまがいたのには驚きました。
――ルイスさんは、セサミワークショップでキャラクターデザインのクリエイティブ・ディレクターとして活動されるまで、どのような経歴を歩んでこられたのでしょうか?
【ルイスさん】私は子どもの頃から絵を描くのが本当に好きだったんです。先に姉が絵を描いていたんですけど、すごく注目を浴びていたので、自分自身ももっと描こう!と思うようになって。そんななかで、当時6歳くらいだったんですけど、母から「あなたが描く絵はすごくスペシャルなものなんだよ」ということを言ってもらったのも大きかったですね。姉はガイドに沿って描くという方法だったんですけど、私はフリーハンドで描いていたから、そう言ってもらえたんだと思います。
その頃「エド・サリヴァン・ショー」(アメリカ・CBSで放送されていたバラエティ番組)を見ていたら、パペットたちがレギュラー出演していて。そのシーンになると私はテレビに駆け寄っていって、本当に夢中になって見ていました。
その後、(人形操演・映画監督・プロデューサーの)ジム・ヘンソンという人が出てきて、エド・サリヴァンと握手をしていたんですが、彼が手にパペットを着けたまま出てきて、子ども心に「大人がやっているんだ!」ということを初めて認識して。(人形操演を)どうやっているのか…という疑問もあったんですけど、とにかく衝撃を受けて、そこからパペットを忘れることができませんでした。
そのパペットの出演シーンというのが、(彼の創作したカエルの)カーミットがピアノを弾いて、ピアノに食べられてしまうというファニーなシーン。どちらかというとおもしろい場面なんですが、私は“ジム・ヘンソンが後ろで操っている”ということにすごく感銘を受けました。
そして数年後にセサミストリートが出てきたとき、パペットたちを見ていたら、「エド・サリヴァン・ショー」に出ていた子たちと似ているなと思い、「あ、これはジム・ヘンソンの作品なんだ」ということに気づいて。世界観が大好きで、高校時代も大学時代も、ずっとセサミストリートを見続けていましたね。
大学はスクール・オブ・ビジュアル・アーツという芸術大学に行きました。就職の際にも「セサミストリートが大好き」という気持ちは変わらず、(セサミストリートの番組を制作する)セサミワークショップに行きたいと思っていました。ですが、当時大学の先生からは「ちょっと目標が高すぎるんじゃないか」、「それは無理だよ」と言われて…。母とはなんでも話せる関係だったので、母に相談したら「先生の言うことなんて気にしなくていい。だって、先生はセサミワークショップで働いているわけじゃないんだもの」と背中を押してくれたんです。そこで奮起して、チャレンジすることにしたんです。そうしたら、熱意が通じて、フリーランスで雇っていただけることになりました。そこから8年ぐらいフリーランスで関わらせていただいていたところ、「フルタイムで仕事をしないか」と声を掛けてもらって、現在に至ります。
――長年にわたり、セサミワークショップでキャラクターデザインを手掛けてこられたルイスさんにとって、「セサミストリートのキャラクターらしさ」を守るうえで、絶対に譲れないデザインの信念やこだわりがあれば教えてください。
【ルイスさん】そうですね。たとえば「エルモ」は何事にも熱心な、一生懸命なキャラクターですし、「バート」は逆に、子どもだけどエキサイトするのがあまり好きじゃない…という落ち着いたキャラクターだったりします。また「クッキーモンスター」は、パッション(情熱)があるんですけど、衝動的なだけではなくて、大好きなクッキーよりも、友だちを大事にしているという一面があったり…。いろいろな解釈があるかもしれませんが、それぞれのキャラクターには象徴的なパーソナリティ(性格・個性)があるんです。それをとても大切にしています。
――セサミストリートという世界に携わっていて、日々、どんなことを思っていますか?大切にしている想いがあれば教えてください。また、長年携わっていくうちに、考え方に変化はありましたか?
【ルイスさん】日々、とてもありがたいなと感謝の気持ちでいっぱいです。自分がすごく愛していること、大好きなことに携われているということが非常に幸せだと思っています。すべてのアーティストが、自分のやりたいことをできているわけではないと思うので。それを長年やれているということ、キャリアとして、仕事として続けられているということにも、本当に感謝しています。
以前は、キャラクターを描くことだけでなく、そのキャラクター自身が「どういう存在であるのか」ということを考えるのが非常に重要だと思っていました。それが、セサミストリートと関わっていく中で、「みんなが共感してくれて、受け入れてくれるコンテンツを届けたい」という想いも抱くようになりましたね。
――ご自身にとって特に思い入れのあるキャラクターはいますか?理由と合わせて教えてください。
【ルイスさん】「クッキーモンスター」が大好きです。みなさんも知っての通り、彼はクッキーがとにかく大好き。けれど、もしクッキーが最後の1枚だったとしたら、彼は喜んで友だちに“大好きなクッキー”差し出すでしょう。友だちを何よりも大切に思い、行動する。そんな彼がすごいなと思うし、とても愛おしいと思います。
――クリエイティブ・ディレクターとして活動される中で、どんなときに喜びを感じますか。その理由も教えてください。
【ルイスさん】一般の方々からの素晴らしいレスポンスが一番の喜びです。キャラクター宛にも会社宛てにもたくさんファンレターが届きます。保護者の方から「子どもを育てるうえで感謝しています」といったお手紙やコメントをいただけるのは、とてもプライスレスなことだなと思います。
――パペット制作において、キャラクターの表情や質感でこだわっていることはありますか?
【ルイスさん】私はアートディレクションを担当しているので、実際にパペットを作るのはジム・ヘンソンのスタジオの皆さんなのですが、キャラクターを表現するうえで必要だと感じるをスタジオの皆さんと綿密に打ち合わせをしながら、一緒に作っています。たとえば、自閉症を持っているキャラクター「ジュリア」に関しては、髪の毛がほかのパペットとは異なり、人毛のようなテクスチャーになっているのですが、それは私の考えが元になっています。
パペットで、そのキャラクターを通してどうストーリーテリングをするのかを考えたときに、当初、ほとんどのキャラクターのパペットの髪の毛は毛糸で作られていたのですが、カメラ目線でなにかを語ることをしない「ジュリア」においては、ほかのパペットとは違う、人間の女の子のような髪の毛(毛糸ではない)がいいのではないかなと思ったんです。そうすることでジュリアの個性、性格をよりリアルに表現できます。「ほかのパペットと違うな」と注目してもらいたいと思いましたし、よりリアルに感じさせることで視聴者に共感してもらえるのではないかと考えました。
――ルイスさんがキャラクターデザインを担当された「ジュリア」について、もう1点お聞きします。自閉症については、「ひとりのパペットだけでは伝えきれないので絵本で伝えるのがふさわしい」と考え、当初「パペットを作る予定はない」とおっしゃっていたようですが、結局はなぜ制作されることになったのでしょうか?
【ルイスさん】自閉症のコミュニティでボランティアをしていたところ、そのコミュニティの中で「ジュリア」の人気が非常に高まってきていました。「番組に登場させて大丈夫だろうか?」という不安もあったのですが、自然に人気が出てきたから…というのはありますね。
それに、「自閉症すべてを象徴するものでなくていい」と言われたのも大きいです。ひとつのことでも注目してもらうことによって、皆さんの気づきになれば…という考えでした。自閉症の認知拡大のきっかけになれば…とパペットの制作を進めたんです。
スケッチやパペットを見ていただくとよりわかりやすいのですが、「ジュリア」は髪の毛だけでなく、鼻などにも特徴があります。彼女はほかのキャラクターたちと違う考え方を持っている子なので、それを表現したくて。“どんどん成長していくダイヤモンドの原石”ということで、ジュリアの鼻はダイヤモンド型になっているんです。
――そうだったんですね。個性あふれるセサミストリートの仲間たちは世界でも愛されていますよね。2026年ワールドカップ決勝ではハーフタイムショーにセサミストリートのキャラクターが出演していました。世界の舞台で活躍するセサミストリートの仲間たちを見て、どう感じられましたか?周囲で反響はありましたか?
【ルイスさん】実は出張などがあって自分自身はじっくり見る時間がなかったんですが、セサミストリートがワールドカップの一部を担ったというか、登場したというのは、ブランドにとっても非常に大きなことで、後押しになったと思います。ファンからもすごく興奮したレスポンスがありました。Netflixの配信もスタートして、世界中に届けられるようになり、セサミストリートの作品はさらに世界中に広がっていっています。国際的なレスポンスもあり、注目されているなと感じました。
――今回、日本への来日は2回目ということですが、日本の印象はいかがですか?前回「日本で刺激を受けた」と話されていましたが、どのような刺激がありましたか?また、今回はどのようなことを楽しみにされているのでしょうか?
【ルイスさん】前回は2026年4月に来日しました。そのときは初めての日本だったのですが、セサミストリートマーケットでもユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも、どこに行っても日本の方々のキャラクターに対するリスペクトや愛を痛感しました。楽しくて、ハートウォーミングな滞在でした。皆さんのセサミストリートへの理解や気持ちも感じることができました。
また日本に来られてとてもうれしいです!日本でもセサミストリートへの愛を感じられることはもちろんですが、食事も楽しみにしていることの一つですね。今日は酸味と辛味が合わさった酸辣湯麺を初めて食べました(笑)。新たななにかに出合えるというのも楽しいことですよね。
セサミストリートのたくさんの魅力を語ってくれたルイスさん。ぜひ、それぞれのキャラクターに込められたストーリーを感じながら「セサミストリート」を観てみてほしい。
取材・文=平井あゆみ
写真=奥西淳二
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■セサミストリート
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