40周年を迎えた「タマ&フレンズ」は学習ドリルでも大活躍!ロングセラーの秘密に迫る

2023.3.30 UPDATE!!

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ネコの タマ と、その仲間たちの日常をほのぼのと描く「タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~」。1983年、迷いネコのタマを探す「うちのタマ知りませんか?」が誕生して以来、幅広い世代から愛され続けているキャラクターだ。アニメにもなり、平成6年度文化庁優秀映画部門「こども向けテレビ用映画部門」最優秀TVシリーズを受賞したほか、今では擬人化したアニメまで登場している。

漢字ドリル。手前が2023年1学期、奥が1993年のもの
漢字ドリル。手前が2023年1学期、奥が1993年のもの


長年愛される「タマ&フレンズ」の商品の中でも、特になじみがあるのが、新学社から発売されている学習ドリル。かわいいタマのイラストが入った表紙は、懐かしさを感じる人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、「タマ&フレンズ」起用のきっかけや、発売当時の反響、長年愛され続ける理由など、気になることを突撃取材!「タマ&フレンズ」のライセンスを管理するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の佐々木さん、そして新学社から、キャラクター導入時を知る小学事業部業務部の小林さん、ドリルの編集を担当する西村さんと三笘(みとま)さん、教具の企画を担当する清久(きよく)さんの5名に話を聞いた。

起用のきっかけは、「裁縫箱」だった⁉

――まずは、「タマ&フレンズ」を起用したきっかけから教えてください。

「1985年当時、社内で、子供たちが日々手にする教材に斬新なデザインを導入したいという『キャラクター戦略』構想が持ち上がりました。そんな中で爆発的な売り上げを記録したのが裁縫箱だったんです」(小林さん)

1997年の裁縫箱は2段仕様。1段でも使えるうえ、小さなお針箱はソーイングセットとして単独でも持ち運べる
1997年の裁縫箱は2段仕様。1段でも使えるうえ、小さなお針箱はソーイングセットとして単独でも持ち運べる


「実は『タマ&フレンズ』を最初に起用したのは裁縫箱だったんですよ。1987年のことです。以前のデザインは毬やコマといった古典的なものでしたが、デザインを一新して大ヒット。キャラクターを取り入れたのも業界初でした。教具のトップメーカーがこのような冒険をするのは珍しかったと思います。これがきっかけになり『タマ&フレンズ』がドリルの表紙にも起用されることになりました」(小林さん)

1986年から1991年製の裁縫箱がズラリ。上段左のトリコロールカラーが1991年製
1986年から1991年製の裁縫箱がズラリ。上段左のトリコロールカラーが1991年製

「裁縫箱の柄にも時代の空気が現れていますよね」と、佐々木さん。1990年代は、トリコロールカラーやローマ字で文章を読ませるデザインが流行ったそうで、裁縫箱の柄からも時代の変遷を感じとることができる。

“キャラクタードリル”の誕生で、学習ドリル界を牽引する立場に!

裁縫箱に続き、1988年、「タマ&フレンズ」が漢字ドリルと計算ドリルの表紙に登場。発売当初から急激に売り上げを伸ばし、その後、一気にドリル界を牽引する立場に躍り出た。

「それまでのドリルの表紙デザインは、実物の犬や猫の写真で背景もくっきりとした色合い。どのメーカーも似たようなデザインだったのですが、当社が柔らかいカラーの背景でタマやポチのキャラクターを使ったことで、ドリルのイメージが変わったんですよね。それ以降、新学社といえばドリルと言われるようになったんです」(清久さん)

【写真】タマが表紙の算数ドリルと計算ドリル。最近では、QRコード付きのものも登場している
【写真】タマが表紙の算数ドリルと計算ドリル。最近では、QRコード付きのものも登場している


――先生や親御さんからの反応はいかがでしたか?

「教材は先生が選ぶので、若い先生だと自分たちの中学・高校時代に『タマ&フレンズ』のブームがあったからか、特に好評でした」と小林さん。「1983年に誕生したこのキャラクターは、1986年から1988年にかけてものすごいブームになりました。その時代を体験した人達が先生やお母さん世代になっているので、懐かしく、注目されることも多いのだと思います」と佐々木さんが続けた。

大きなサイズが定番。右のハーフサイズは三笘さんお手製
大きなサイズが定番。右のハーフサイズは三笘さんお手製

実際に学校に赴き、教材の説明をする機会があるという三笘さんは、宣伝用に作ったキャラクター入りの袋を自分らしくアレンジ。「この袋で学校を訪問すると、先生方に大好評で、袋を分けてもらえないかという声もあります。『新学社です』と言うより『ポチ・タマでお世話になっています』と言った方が通じるくらい。ドリルにはアンケートが付いているのですが、そこにも『キャラクターがかわいい』というコメントが多く寄せられるんですよ」と、学校内での人気ぶりがうかがえるエピソードも。

裁縫箱時代から携わる小林章秀さん(左)と、ドリル編集を担当する三笘航太郎さん(右)
裁縫箱時代から携わる小林章秀さん(左)と、ドリル編集を担当する三笘航太郎さん(右)

ちなみに「ポチ・タマ」とは、新学社だけで飛び交う「タマ&フレンズ」の短縮ワードだ。イヌやネコの写真を使っていた当時は「犬猫ドリル」と呼ばれていたが、その名残りでイヌ=ポチ、ネコ=タマから「ポチ・タマ」と言われるようになったとか。

ドリルの中にもキャラクターが隠れている!

「タマ&フレンズ」起用後、売り上げが約1.4倍に伸び、ドリル業界のトップクラスに躍り出た新学社。

――「タマ&フレンズ」のアートはどのように作成を?

「表紙や裏表紙に使うキャラクターは、SCPさんから提供いただいています。中には当社専用に書き起こしてくださっているものもあり、ほかでは見ることのできないイラストがたくさんあるんです」と、ドリルの編集を担当する西村さん。佐々木さんも「そうなんです。毎年新しいアートを制作してライセンシー様にお配りしていますが、昔は3D仕様で描かれたこともあって時代を感じます」と振り返った。

――キャラクターを取り入れてから、ドリルの内容にも変化がありましたか?

新学社で「タマ&フレンズ」が使われているのは漢字ドリルと計算ドリル。キャラクターを取り入れる前から、丁寧でわかりやすい編集ページが好評だったそう。

こんなところにもタマやポチが!
こんなところにもタマやポチが!


「表紙のデザインは、デザイン課が担当。それを元にページを編集していきます。表紙や裏表紙のほか、内側にもイラストを使って、児童のみなさんが毎日楽しく飽きずに勉強できるように思いを込めて作っています。実は、ページのいろいろなところにキャラクターが隠れているので、ぜひ探してもらいたいですね」と西村さん。三笘さんも「1学期から3学期まで、ストーリーや季節感を持たせたドリルを作るよう工夫しています」と話してくれた。

裏表紙にはタマと仲間たちが大集合。「みんなで集まっている姿がかわいくてたまりません」と三笘さん
裏表紙にはタマと仲間たちが大集合。「みんなで集まっている姿がかわいくてたまりません」と三笘さん


新学社は、ドリルについても業界初の工夫を取り入れてきたパイオニア。「漢字ドリルは、書き順を分解して色分けするなど、こだわりを持って初めてのことに挑んできた歴史があります。キャラクターの表紙で注目されたことで、中身の良さも皆さんに伝わったのだと思います」(小林さん)

書き順を色で分け、書き方を分解して解説している
書き順を色で分け、書き方を分解して解説している


「タマ&フレンズ」が愛される理由とは?

――誕生から40年、新学社のドリルに登場して35年。「タマ&フレンズ」がこんなに長く愛される理由とは何だと思いますか?

「このキャラクターは、弊社のクリエイターが飼っていたネコが本当にいなくなってしまい、自分でネコ探しのポスターを作っていたら、それを見た上司が『このコンセプトおもしろいね』と商品化したものなんです。流行った当時は親世代でお子さんと一緒に楽しんでいた方たちが、今ではおじいちゃんおばあちゃん世代になり、3世代にわたって愛されるキャラクターになりました。ドリルの表紙になったことで、新しい世代への認知度もぐっと高まったと思います」(佐々木さん)

ぬいぐるみにもなっている「タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~」
ぬいぐるみにもなっている「タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~」


新学社の社内で「ポチ・タマ」と呼ばれていることについても、佐々木さんは以前からとても不思議に思っていたそうだ。「この呼び方をされるのは新学社さんだけなんです。本来ならイエローカードですが、でも、それだけ大切に愛されているという現れだと思っています」(佐々木さん)

また、キャラクターに個性があるのもポイントだという。「私は、いばっているのに気が弱く、みんなと仲間になりたいと思っているブルが大好きなんです」と、西村さん。三笘さんも「自分の好きなキャラクターが探せることも、魅力のひとつですよね」と話してくれた。

「ポチ・タマ」ドリル、今後はどんな展開に?

――長年愛されてきたタマの学習用ドリルですが、今後の展望について教えてください

「今は紙のドリルだけでなく、デジタル上で使うタイプも併用しています。漢字・計算ドリル共に、表紙にQRコードを設け、そこからデジタル上でドリルが学べるようになっています。今後、クリックするたびに、タマが『ニャン』と鳴いたりしたら、もっと楽しく勉強ができるかもしれませんね」(西村さん)

ページの中にもキャラクターがいっぱい!
ページの中にもキャラクターがいっぱい!


清久さんは「学校では、2024年度までに小中全学年で“児童生徒1人1台コンピューター”を実現するはずだったのですが、コロナ禍で休校が多くなり、実施が早まったんです。授業で1人1台タブレットを用いるような時代になった今、パソコンやiPadを使った教材のシステムも必要になってきたんですよね」と、教育現場と対応して教材も進化する必要があることを付け加えた。

誕生して40周年、ドリルに登場して35年。「タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?」は、仲間を大切にする思いや教育的にも学びのある物語が展開される。世代的にみても、30代には94%、50代には75%の認知度があるこのキャラクター。今後は3世代のみならず、デジタル世代の子供たちが大人になっても愛され続けるに違いない。

取材・文=田村のりこ
写真=山田絵里

(C)Sony Creative Products Inc.

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タマ&フレンズ

1983年に「飼い猫を探すポスター」でデビュー。その後、雑貨のみならず、絵本やアニメなどを通じて大人気に

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