「シュルツさんが描く『ピーナッツ』の世界観と僕の世界観に矛盾がなかった」翻訳を手掛けた詩人・谷川俊太郎の“思い出のスヌーピーグッズ”とは?

2024.3.7 UPDATE!!

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2024年3月6日発売の 『ダ・ヴィンチ』4月号 では、「スヌーピーミュージアム」のレポートとともに、4人の著名人の“思い出のスヌーピーグッズ”を特集している。本記事では、それぞれが語ってくれた スヌーピー にまつわるエピソードをシリーズで紹介する。

第一回は、詩人の谷川俊太郎さん。スヌーピーが登場するコミック「PEANUTS(ピーナッツ)」の翻訳者としても知られている。作者のチャールズ M.シュルツさんと会ったこともあるという谷川さんの思い出とは?

詩人・谷川俊太郎さん
詩人・谷川俊太郎さん写真:深堀瑞穂


「シュルツさんが描く『ピーナッツ』の世界観と僕の世界観に矛盾がなかった」谷川俊太郎さん(詩人)

『ピーナッツ』を翻訳し始めた30代の頃、手元に『ピーナッツ』関連の物を置いておきたくて、真鍮のキーホルダーを購入しました。スヌーピーそのものが真鍮で象られたもので、デザインも材質も気に入ったのを覚えています。

あれほど長い期間、翻訳し続けた作品は他にありません。初めのうちは作品を翻訳できることに楽しさしかなかったのですが、やはり仕事として毎日翻訳を続けていると、少し重荷に感じてしまう時期もありました。でも、他の人が翻訳したセリフを見ると、なんだか違和感を感じてしまうんです。

日本語は、口調が大事です。スヌーピーの口調、チャーリー・ブラウンの口調と、キャラクターによって口調は異なります。自分以外の方が翻訳したセリフを見ると、キャラクターの雰囲気が変わってしまったような気がして。『ピーナッツ』の仲間たちが僕にとって親しい存在になっていたから、そういう気持ちになっていたのだと思います。

日本と海外では主に使う言語が異なるだけでなく、背景にある文化も違います。ですから翻訳するときには、日本人が理解しにくいことを、どう表現すれば読者の心に入っていくのかを考えます。これが結構、難しいのです。翻訳全般そういうものなのですが『ピーナッツ』は抵抗感なく訳すことができました。

それはシュルツさんが描く『ピーナッツ』の世界観と僕の世界観に、矛盾がなかったからなのでしょう。シュルツさんが描く世界には自然と共感できますし、単純に好きなんです。

登場するキャラクターは、わざとらしくなくて、いつも自然体。一人一人個性が違い、ちゃんと生きているように思えます。キャラクターは全員同じくらいに好きですし、キャラクターを描く線一本にしても好きですね。

描くものだけでなく、シュルツさん自身のこともそうです。実際にお会いしたとき、彼はマンガ家というより哲学者であるような印象を受けました。すごく物静かで、深く考えている。自分と似たような人なんじゃないかな、と思ったのを覚えています。

思い出のスヌーピーグッズ

50年以上前に購入した、スヌーピーが象られた真鍮のキーホルダー。「いつの間にかなくなってしまって」とお茶目に語った谷川さん。もう手元にはないキーホルダーだが、谷川さんの記憶の中には存在し続けている。

次回は、デザイナー・祖父江慎さんのエピソードを紹介する。



※本記事は、発売中の「ダ・ヴィンチ」2024年4月号をもとに再編集したものです。

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(C) 2024 Peanuts Worldwide LLC

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スヌーピー(PEANUTS)

漫画「PEANUTS (ピーナッツ)」に登場する、主人公のチャーリー・ブラウンの愛犬。空想力豊かで、さまざまなキャラクタ―になりきる

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